自閉症からの脱皮1.-前頭葉についてー

自閉症に代表される発達障害は、免疫力の基礎が出来上がってしまった大人が罹る病気とは性質の異なる異常現象です。

発達障害は、自然な成長の流れを邪魔する何かによって、発達が止まってしまう状態、あるいは異常な方向へと発達が進んでしまう現象です。

未だ、その治療法は西洋医学では解明・確立されていません。

その理由は、一般的に「病気」と呼ばれる状態のように、その治癒が、「症状が消える」ことではないからです。対処療法にフォーカスをあてて発展してきた現代医学の理解の仕方では説明できないことだからだなのでしょう。

GAPS食事療法フェルデンクライス・メソッドのプラクティショナーとして、自閉症と診断されたクライアントの様々なケースに出会いました。それぞれ微妙に十人十色の異なる症状を持っていましたが、それでも幾つか共通点がありました。

その中でも、私が特に興味を持ったのは、第三の目と呼ばれる場所(眉と眉の間辺り)、つまり、脳の前頭葉の周辺が腫れていることでした。

それは、私が出会った全ての発達障害と診断されたクライアントさん(2歳から26歳まで)に、共通していたからです。

例えば、ある15歳のピーター君のケースでは、この部分が酷く腫れあがって、ちょうど「目の上のたん瘤」という表現がピッタリの状態でした。それが、さらに腫れあがると、彼は酷いOCD(強迫性障害)の発作を起こし、ハルシネーションを起こしました。彼の幻覚は、誰か敵が自分の前に現れるイメージだったようで、突然、「殺してやる!」と、怒鳴りだすのです。私のハンズ・オン・セラピー中は、リラックスし半分眠っているかのように目を閉じていることが多いのですが、それでも突然、カッと目を見開いたかと思うと、天井に向かって叫ぶことが、時々ありました。そんな時は、決まって目の上のたん瘤が酷く腫れあがっていたのです。

この腫れは、全てのケースでGAPS食事療法を始めて数週間から数か月で引いていきました。でも、アイスクリーム、ケーキ、クッキー、フライド・ポテトなどのジャンク・フードを食べると、途端に戻ってきました。

この腫れは、彼らの発達の遅れを取り返していく進展度と比例していました。GAPS食事療法をしっかり続けている間は、彼らの人間としての言語表現能力、運動能力、適応能力、マナーや行動が向上し、ジャンクフードを食べて腫れあがると退行するのは明らかでした。

自閉症の原因が前頭葉にあることは明らかでした。もちろん、それだけではないかもしれません。でも、前頭葉に起きている何かが、彼らの自然な発達の妨げになっていることは、医者でない私の目にも明らかだったのです。下記には、2つの私が翻訳した参考文献をご紹介します。私が出会った自閉症、自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群などのお子さんたちの症状は、まさにこれらの資料が描写するものでした。

 

Frontal lobe – Human brain in x-ray view

Frontal lobe functions – PubMed (nih.gov)

要約

人間の脳の2/3をしめる前頭葉ですが、その機能は長い間、謎でした。運動機能と言語機能については良く知られていましたが、それ以外のことは、今まで良く分かっていなかったのです。でも、最近の研究によって、前頭葉に関する知識と理解に進展があり、その重要な役割が発見されました。それは、実行力、集中力、記憶力、言語表現能力など、多数の認知機能です。また、基本となる執着、ムード、個性、自己認識力などと、社会的、道徳的理由付けなど、情報の処理過程における前頭葉機能の重要性が、近年のリサーチによって、さらに更新されました。この記事は、最近更新された前頭葉の機能についての知識にフォーカスしたものです。

Abstract

The frontal lobes constitute two thirds of the human brain, yet the functions performed by them remained mysterious for a long time. Apart from their well-known involvement in motor function and language, little was previously known about the functions of the frontal lobes. Recent advances have uncovered important roles for the frontal lobes in a multitude of cognitive processes, such as executive function, attention, memory, and language. The importance of the frontal lobes in processes underlying affect, mood, personality, self-awareness, as well as social and moral reasoning, is also a renewed area for research. This article focuses on recent advances in understanding frontal lobe functions.

 

Frontal Lobes | Centre for Neuro Skills

FRONTAL LOBES

前頭葉

前頭葉は、感情の管制塔のような役割をするセンターと個性の基礎と考えられています。ダメージを受けることで、これほど多様な症状を生じる場所は脳内の何処にもないのです。一人の人間であるための人格形成機能、および能力の主要なものを、前頭葉が司っていることが分かります。それらの能力には、運動機能力、問題解決力、主体性、記憶力、言語表現、実行力、判断力、衝動をコントロールする力、そして社会的、性的に分別ある行動などが挙げられます。ところが、前頭葉は頭蓋骨の先頭に位置すること、蝶形骨に近い場所に位置すること、そして大きさも大きいなどの理由から、障害を受けやすいのです。前頭葉周辺は、軽度から中度の障害を最も受けやすい場所であることが、MRIから学べます。

前頭葉は、重要な左右不対象の性質が存在します。左側には、運動性言語中枢があり、右側は言語とは無関係な能力を司ります。このルールは完全ではない上に、全ての人々に当てはまるわけではないと、一部の研究者たちは主張しています。

運動機能を司る部分の障害は、動きの微細さと、腕、手と指の強さが失われることが、典型的な特徴です。 (Kuypers, 1981) 複雑な筋肉運動の連鎖もまた、前頭葉によって司られているようです。 (Leonard et al., 1988) 前頭葉にダメージを受けた患者は、表情に乏しいです。つまり、表情の豊かさにおける前頭葉の役割が示されることになります。 (Kolb & Milner, 1981) ブラウン博士によれば、前頭葉内のブロカという部分がダメージを受けると失語症になります。これをブロカの失語症と呼びます。本人、言われていることは感覚的に理解できるのですが、それを言葉で整理したり、表現したりすることが出来ません。(1972年)

前頭葉のダメージに関連する現象の中でも興味深いのは、従来のIQテストにはさほど影響がないことです。研究者たちは、その理由として、普通IQテストは拡散的思考とは反対の収束的思考のテストだからだと信じています。前頭葉のダメージは、問題解決における柔軟な思考力、または拡散的思考能力に影響するようです。また、脳の外傷がかなり良い状態に回復したとしても、集中力と記憶力の機能的回復には、長期に渡って支障となることが分かっています。 (Stuss et al., 1985).

また、前頭葉のダメージは、自発的な行動とも関連しています。コルブとミルナー(1981)は、前頭葉にダメージ受けた人の表情が乏しくなり、発せられる言葉も少なくなる(左脳にダメージを受けた場合)、または過剰になる(右脳にダメージを受けた場合)ことを発見しました。

そして、前頭葉のダメージによる機能障害の中でも一番特徴的なのは、状況判断が困難になることです。自己抑制力(Milner, 1964)、リスクテイクする力、ルールに従う力(Miller, 1985)、そして、周りの雰囲気や空気を読むことで自分の振舞いのガイドとする協調性に欠ける(Drewe, 1975)などといった、他人との交流をサポートする能力に欠損が見られます。

そして、前頭葉のダメージによる機能障害の中でも一番特徴的なのは、状況判断が困難になることです。自己抑制力(Milner, 1964)、リスクテイクする力、ルールに従う力(Miller, 1985)、そして、周りの雰囲気や空気を読むことで自分の振舞いのガイドとする協調性に欠ける(Drewe, 1975)などといった、他人との交流をサポートする能力に欠損が見られます。

前頭葉には、自分の体と空間との位置関係を図る空間識という機能を司る役目がある。(Semmes et al., 1963)

社会的なふるまいが一変することは、前頭葉のダメージの中でも、もっとも一般的なものと言えます。特に左右両方の前頭葉がダメージを受けた場合、その人のパーソナリティの変容には驚くべきものがあります。前頭葉の左側がダメージを受けた時と、右側がダメージを受けた時では、何かしら異なるものがあります。左側のダメージは疑似的うつ病のていをなし、右側のダメージは疑似的政審疾病(社会生活上の困難をしめすパーソナリティ障害)のていをなすのが、一般的です。(Blumer and Benson, 1975)

性的な振舞いも、前頭葉の障害による影響を受けます。眼窩前頭皮質のダメージは異常な性的行為を招き、背外側眼窩野のダメージは、性的な興味を減退させます。(Walker and Blummer, 1975)

一般的な前頭葉のテストには、Wisconsin Card Sorting (柔軟な反応のテスト); Finger Tapping (運動能力テスト); Token Test (言語力テスト)などがあります。

The frontal lobes are considered our emotional control center and home to our personality. There is no other part of the brain where lesions can cause such a wide variety of symptoms (Kolb & Wishaw, 1990). The frontal lobes are involved in motor function, problem solving, spontaneity, memory, language, initiation, judgement, impulse control, and social and sexual behavior. The frontal lobes are extremely vulnerable to injury due to their location at the front of the cranium, proximity to the sphenoid wing and their large size. MRI studies have shown that the frontal area is the most common region of injury following mild to moderate traumatic brain injury (Levin et al., 1987).

There are important asymmetrical differences in the frontal lobes. The left frontal lobe is involved in controlling language related movement, whereas the right frontal lobe plays a role in non-verbal abilities. Some researchers emphasize that this rule is not absolute and that with many people, both lobes are involved in nearly all behavior.

Disturbance of motor function is typically characterized by loss of fine movements and strength of the arms, hands and fingers (Kuypers, 1981). Complex chains of motor movement also seem to be controlled by the frontal lobes (Leonard et al., 1988). Patients with frontal lobe damage exhibit little spontaneous facial expression, which points to the role of the frontal lobes in facial expression (Kolb & Milner, 1981). Broca’s Aphasia, or difficulty in speaking, has been associated with frontal damage by Brown (1972).

An interesting phenomenon of frontal lobe damage is the insignificant effect it can have on traditional IQ testing. Researchers believe that this may have to do with IQ tests typically assessing convergent rather than divergent thinking. Frontal lobe damage seems to have an impact on divergent thinking, or flexibility and problem solving ability. There is also evidence showing lingering interference with attention and memory even after good recovery from a TBI (Stuss et al., 1985).

Another area often associated with frontal damage is that of “behavioral sponteneity.” Kolb & Milner (1981) found that individual with frontal damage displayed fewer spontaneous facial movements, spoke fewer words (left frontal lesions) or excessively (right frontal lesions).

One of the most common characteristics of frontal lobe damage is difficulty in interpreting feedback from the environment. Perseverating on a response (Milner, 1964), risk taking, and non-compliance with rules (Miller, 1985), and impaired associated learning (using external cues to help guide behavior) (Drewe, 1975) are a few examples of this type of deficit.

The frontal lobes are also thought to play a part in our spatial orientation, including our body’s orientation in space (Semmes et al., 1963).

One of the most common effects of frontal damage can be a dramatic change in social behavior. A person’s personality can undergo significant changes after an injury to the frontal lobes, especially when both lobes are involved. There are some differences in the left versus right frontal lobes in this area. Left frontal damage usually manifests as pseudodepression and right frontal damage as pseudopsychopathic (Blumer and Benson, 1975).

Sexual behavior can also be effected by frontal lesions. Orbital frontal damage can introduce abnormal sexual behavior, while dorolateral lesions may reduce sexual interest (Walker and Blummer, 1975).

Some common tests for frontal lobe function are: Wisconsin Card Sorting (response inhibition); Finger Tapping (motor skills); Token Test (language skills).

References:

Blumer, D., & Benson, D. Personality changes with frontal and temporal lobe lesions. In D. Benson and D. Blumer, eds. Psychiatric Aspects of Neurologic Disease. New York: Grune & Stratton, 1975.

Brown, J. Aphasia, Apraxia and Agnosia. Springfield, IL: Charles C. Thomas, 1972.

Drewe, E. (1975). Go-no-go learning after frontal lobe lesion in humans. Cortex, 11:8-16.

Kolb, B., & Milner, B. (1981). Performance of complex arm and facial movements after focal brain lesions. Neuropsychologia, 19:505-514.

Kuypers, H. Anatomy of the descending pathways. In V. Brooks, ed. The Nervous System, Handbook of Physiology, vol. 2. Baltimore: Williams and Wilkins, 1981.

Leonard, G., Jones, L., & Milner, B. (1988). Residual impairment in handgrip strength after unilateral frontal-lobe lesions. Neuropsychologia, 26:555-564.

Levin et al. (1987). Magnetic resonance imaging and computerized tomography in relation to the neurobehavioral sequelae of mild and moderate head injuries. Journal of Neurosurgery, 66, 706-713.

Miller, L. (1985). Cognitive risk taking after frontal or temporal lobectomy. I. The synthesis of fragmented visual information. Neuropsychologia, 23:359-369.

Milner, B. Some effects of frontal lobectomy in man. In J. Warren and K. Akert, eds. The Frontal Granular Cortex and Behavior. New York: McGraw-Hill, 1964.

Semmes, J., Weinstein, S., Ghent, L., & Teuber, H. (1963). Impaired orientation in personal and extrapersonal space. Brain, 86:747-772.

Stuss, D. et al. (1985). Subtle neuropsychological deficits in patients with good recovery after closed head injury. Neurosurgery, 17, 41-47.

Walker, E., & Blumer, D. The localization of sex in the brain. In K.J. Zulch, O. Creutzfeldt, and G. Galbraith, eds. Cerebral Localization, Berlin and New York: Springer-Verlag, 1975.