“裏金”という言葉を生んだ、ボーンブロスの闇取引

1700年代中頃、一杯のボーン・ブロスだけでお金儲けする方法を英国海軍船が発見しました。

長期に渡って航海する海軍船に乗船するコックはスープを作ります。大きなスープ鍋を水で満たし、鶏や豚、牛の骨を入れ、香りづけに月桂樹の葉っぱもおそらく入れたでしょう。あとは簡単に数時間煮込むだけ。骨の出汁が出来ていい香りがしてきたらスープを取ります。その後、同じ骨を使って再度ブロスを作り、さらに骨を再利用しながら3回、4回、5回とブロスを作りました。

最初に出来上がったブロスの上部には厚い脂の層が出来ます。この部分はスープに適さないため、コックはこの脂をすくい取り、空になった牛肉や豚肉用の樽に溜め込んでいきました。

そして船が帰港した際、港で待ち構えていた商人たちに溜め込んだ脂を販売したのです。この脂はロウソクや石鹸の貴重な原料になり、調理にも重宝するものでした。こっそり溜め込まれた脂(slush)とそれを売買したお金(fund)。これが“裏金(slush fund)”という言い回しが生まれた歴史的背景です。

今日、腸壁を整えて栄養補給もできるという点からボーン・ブロスが高く評価されています。ボーン・ブロスはアミノ酸(特にアルギニン、グリシン、プロリン)が豊富で、体内コラーゲンや腸を修復するゼラチンも多く含んでいます。

動物の骨を炙ってからスープを作る方が多いですが、私のやり方は違います。私の場合、まず冷凍された骨1パックをスロークッカーに入れ、蒸留水で満たし、月桂樹の葉っぱを加え、骨の栄養を最大限に抽出するためのりんご酢も加えます。そして嬉しいことに後は放っておくだけ。

コツは何度も水を入れ替えて、指で骨がほぐれてしまうくらいにまで煮込み続けることです。毎日水を入れ替えながら、5日間ずっとスロークッカーで煮込み続けることも時折あります。一袋の骨から毎日、何ガロンものボーン・ブロスがとれるのです。

ところで、いま話しているボーン・ブロスと、腸壁の修復に効果的なミート・ストック(こちらで紹介しています)は別物ですのでご注意ください。ボーン・ブロスは栄養補給にはなりますが、リーキーガットには効きません。

好みによって、玉葱やニンジン、セロリ、胡椒の実を加えてもいいでしょう。

私の好きな食べ方は、1カップのボーン・ブロスに、卵の黄身、たっぷりの塩、コショウ、ウコン、小さじにたっぷり1杯のココナッツ・オイルを加えたものです。卵は、草や虫を食べ、太陽の下で放し飼いされた鶏のものを使います。これは本当に本当に美味しいですよ。

参考資料:
● テレビシリーズ「アメリカン・スラング」(American Slang)、ヒストリー・チャネル、2013
● 書籍「海軍船と商船における悪事と乱用」(Evils & Abuses in Naval & Merchant Service)、ウィリアム・マクナリー、1839
● 雑誌「ザ・ジェントルマンズ・マガジン」(The Gentleman’s Magazine)、1756
● 書籍「英国海軍の提唱者」(The Royal Navy-men’s Advocate)、1757
● フレーズ・ファインダー

出典: ナリッシング・プロット
原文筆者: ベッキー・プロットナー